昔おばあちゃんが、よく裏庭にお米を撒いていたと聞いた。ぱらぱらと撒いておくだけで、どこから見つけてくるのか雀がやってきて食べるのだそうだ。その様子を眺めるのが好きだったそうだ。
この前和室で作業をしていて、ふと裏庭を眺めると雀がいた。お米なんて撒いてないのになと思ったけど、野菜畑になんとなく散らしていた藁の稲穂部分をついばんでいたのだった。ぴょこぴょこ跳ねる雀を薄桃色のレースカーテン越しに眺めている。淡い光の中の向こう側を見つめながら、おばあちゃんの瞳が自分にだぶってくるような気持ちがした。
毎日なんて、誰かの見た走馬灯みたいだな。現実と呼ばれているものは、本当はこれまで生きてきたすべての人の瞳が入れ替わり立ち替わりわたしの中を通っていく幻影に過ぎないのかもしれない。そうして積み上げられた視線の中でかろうじて立つわたしは全てが鏡でできたモザイクみたいだと思う。
雀よ雀、わたしの姿はどんな風に見えるかな。あなたの中にもいつかわたしは通りますか。
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